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スーツや靴と一緒ですやん。
自分の身体、というか、生活にフィットするものを
作ってもらえるという信頼感。

お施主様インタビュー vol.1
今北 雅万(まさかず)様・友紀子様

震災で自宅を失った母が住みたがったのは“昔ながらの和風住宅”

当社スタッフ:
今北様のご自宅を当社で建てさせて頂きましたのが1996年ですから、もう20年以上こちらにお住まいです。 いつ、どんなきっかけで和風住宅にご興味を持たれたのでしょうか。
雅万様:
ずっと木造住宅に住んでたんですが、阪神大震災で全壊してしまいまして。ですから、最初は木造に住む気持ちなんてまったくなくて、鉄筋コンクリートの、地下室ぐらいあるような頑丈な建物を建てたいなと思ってたんですよ。
震災直後、プレハブ住宅は地震に強いという話を聞いてましたので、仕事の関係もあってハウスメーカーも複数社あたってましたところ、母が「鉄筋コンクリートなんてやめて。プレハブなんてとんでもない。わたしはやっぱり瓦、壁、障子の入った昔ながらの和風建築に住みたい。」と。
当社スタッフ:
当社で建てさせていただく前からずっと伝統的な和風住宅にお住まいで、その良さをよくご存じだったんですね。
雅万様:
母はこの家に昭和の初めに嫁いできたんですが、最初の家は大阪大空襲(1945年6月)のときに焼けてもて、そのあと同じような間取で父が建て直しました。それが今度は阪神大震災で全壊したんですね。そういうこともあって、母は木造へのこだわりが強かったんやと思います。
それでわたしが勤めてた会社の装工部の紹介で、設計事務所さんによる「数寄屋風」の建築の図面ができ上がってきて、会社に関係ある工務店を紹介してもらうとこまで行ってたんです。
当社スタッフ:
それなのにどうして、当社にご依頼いただいたのですか?
雅万様:
もともと家内の母が安井清副社長(当時)の奥さんとお知り合いやったんです。それで地震後に、清副社長の奥さんに「お宅のお身内大丈夫やったん?」て訊いてもらったのが、安井杢さんとのきっかけです。よかったら相談に乗りましょうと声かけてもらって、いっぺんお話を聞きに行ってみようか、と伺いました。
当社スタッフ:
それ以前には、当社のことはご存じだったんですか?
友紀子様:
知らなかったです。母は清副社長の奥さんから、安井杢さんは古いお家で桂離宮を修復しはったと聞いて、しっかりしたとこやから間違いないというふうに思っていたみたいです。
雅万様:
そこは(その後依頼を決める要因として)大きかったかもしれませんね。だから家内が安井杢さんに頼むことを不安がらへんかったんです。とにかく、この人が「イヤや」言い出したら全然話にならんから(笑)。
当社スタッフ:
当社の第一印象を教えてください。
雅万様:
古い会社やなと思いましたね、西国街道の道標が近所にあったりして。それと、社長室には立派な棟札とかが置いてあって、伝統的な技術のある会社という感じ。
当社スタッフ:
当初、打合せはどのように始められたのですか。
雅万様:
当時は阪神大震災の後で多くの方が家を失ってはりましたから、住宅建築業界は大忙しでした。ハウスメーカーでも1年待ってくださいとかやったし、出入りの工務店でさえ、いつ着工できるかわかりませんと言ってくる始末でした。
そんな中で当時の洋太郎社長にお会いして、色々と話をさせてもろたんです。
「本当は、鉄筋コンクリートのような災害に強い建物にしたかったんやけど、母がどうしても言うことを聞いてくれません。そやから、どうせ和風住宅を建てるんやったら、うんといい頑丈な家を建てたいんです。」と申し上げたと思います。
そしたら、洋太郎社長はお忙しいにもかかわらず、「まかしときなはれ!とにかくやりましょう!」と言ってくれはったんですわ。 それからは、毎週毎週が打合せの連続でした。当時わたしは50歳を超え、子供もいましたし母も同居していました。洋太郎社長は、そんなわたしたち家族の状況を考えて、将来のことも考えたらどんな家にするべきか、資金計画はどうするかなど、何から何まで親身になって考えて頂きました。
また、床柱は実際に北山まで見に行きましたし、北山でええのがなかったから問屋さんにまで行きました。絞(しぼ)の具合はどんなんがいいとか、値段はどうやとかね。社長に云われて、わたしも家内もよう勉強したもんです。
友紀子様:
洋太郎社長にお会いしたその日に、安井杢さんで建てはったお家を3軒見せてもらったんですが、よその家とは、質や材料から生まれる空気感が全然違いました。
雅万様:
それで安井杢さんにお願いすることが決まったもんですから、一旦頼んでいた設計事務所さんには、当時工務部長やった中嶌さんが断りの交渉をしてくれはった。あの方がいてはれへんかったら、この話はなかったなと思います。
当社スタッフ:
多くの工務店の中から当社を選んで頂いた理由を教えてください。
雅万様:
注文住宅なんでね、スーツや靴作ったりするのと一緒ですやん。自分の身体、というか、生活にフィットするものを作ってもらえるという信頼感。
次に、社長はじめ皆さん熱意をもって一所懸命やってくれはる。左官屋さん、電気屋さん、内装屋さんから土工さんまで、一つの大きなハイレベルな集団になったはる。なんかあったらいつもの職人さんが来てくれはる。その安心感。 それから、建物の完成度の高さ。

住まうほどに“艶の出る家”

当社スタッフ:
この家に住んでみられて、ご感想はいかがですか。
雅万様:
もう気持ちよく住まわせてもらってます。ともかくその一言。基礎は地中梁にベタ基礎でしっかりしているし、下から湿気もない。
友紀子様:
ここは、もともと地盤が悪いんです。
雅万様:
20年経って更新するのはエアコン、機器類。それ以外はピリッともしない。雨漏りもない、壁紙もなんともない。15年目に点検してもらって、月見台の栗材取り替え、外壁の部分補修ぐらいですわ。
部屋にいても、安全が確保されている安心感と、木と土と紙という素材が選び抜かれている空間の心地よさがありますね。杢目は美しいし、使うほどに艶がでて。
友紀子様:
部屋のどこからも緑が見えるような配置で、風が通ります。
当社スタッフ:
お花や紅葉でも季節が感じられますね。
友紀子様:
和室のほうは安井杢さんにお任せでしたけど、水屋もちゃんとしてもらったし使わないともったいないと思って、もう一度お茶(茶道)をやり始めました。月に二回ぐらいは使っています。
当社スタッフ:
当社のいいところと悪いところを伺いたいと思います。まず、いいところはどこですか。
雅万様:
一つ目は、ものすごくいい材料や銘木を使っていただくこと。
今は見えない梁、柱も、天井の下地までも、しっかり作ってある。建築中に通りがった専門家で「いいもん使うてはりますなぁ」と褒めてくれはった人、何人かあったな。
雅万様:
二つ目は、高い技術力に裏打ちされた職人集団であること、名工がたくさんいらっしゃること。工事現場を見るのもどんだけ楽しかったか。玄関の網代天井も、座敷の縁の化粧屋根裏天井も、材料の色をあわせたり杢目の具合をみるのに手間をかけてもらいました。棟梁が、玄関の化粧丸太にチョウナで三つ斫り(はつり)を入れるときも「見といてください、ここでチョンチョンとやりますので」と。
友紀子様:
休憩中でも若い大工さんに副棟梁が丁寧に教えてはって、みなさん穏やかで、感心しました。
雅万様:
三つ目は、徹底した顧客志向。これは注文通りのものを作っていただけるということ。
最初は応接室に間接照明を提案してもらってたんやけど、わたしが前の家にあった照明器具を活かしてほしかったんで変更しましたし、玄関から座敷への廊下の材料もわたしの希望に沿うように探してもらいました。座敷の欄間は、桂離宮のをうちの寸法にアレンジした「月の字崩し」にしてもらったし、母の部屋の平書院の上の小壁や、二階からの避難にも役に立つ勾欄とかに桂離宮の真似をちょっとさしてもらいました。また、月見台。ここは前に震災でなくなってしまった家の玄関なんです。それがわかるようにね。
友紀子様:
台所の造り付けの棚や収納は、わたしの要望を出して作ってもらいました。
当社スタッフ:
また、こちらのお家の5年ほど後に、隣の息子さんのお家も当社へご依頼いただきまして、ありがとうございます。
雅万様:
この家が素晴らしかったから、まったく迷わずお願いしました。 息子の家もまた中嶌さんが一所懸命考えてくれはって、平屋なんやけどリビングに吹き抜けの大空間をつくってもらった。地震以来、わたしが「平屋がいい」と云うてましたんでね。 それと、家内と二人になればこの家は大きいし、将来息子の家と交代してもいいなと。
友紀子様:
当時主人はそう思ってたみたいですね。わたしはこんないいところ動きたくないわ(笑)。
当社スタッフ:
悪いところは。
雅万様:
悪いとこというと、たぶん価格の問題がでてくるんやないかと思います。
でもね、決して高いんやないんです。そのクオリティの高さ、ちょっと普通では使えないような銘木。その品質に見合う工事費であれば、高くても構わないと。そんだけのものは他のとこでは作られへんの違うかと、わたしなんかは思ってます。 もうパタパタパターとやってしまうような大工さんや左官屋さん、わたしはなんぼでも知ってます、やっつけ仕事で。そういう極端な仕事を見てますのでね(笑)。

永きにわたる伝統や文化を次世代へしっかり継承すること。

当社スタッフ:
当社への今後の期待、要望などおありでしたら、お願いします。
雅万様:
永きにわたる伝統や文化を次世代へしっかり継承していただきたい。これに尽きると思います。 こんなこと云うたらいかんのですけど、やっぱりこの市場(マーケット)、限られてるからしんどいと思うんですよ。ちょっと価格安くして、材料変えてでも、もう少し仕事をとったり、売上高があがるようにしたらどないや、みたいな意見もあるかもわかりません。
せやけどわたしはこう思うんです。中途半端に市場(マーケット)に迎合せず、アッパーステージの最高級品質を継続されたい。 ハイクオリティとテイストを考えるお客さんは、絶対います。数は少ない。ただ、そこが安井杢さんが力を思い切り発揮できるとこなんでね。それが高いとか安いとかとはちがう。「気持ちよく生活さしてもうてます」とさっき申し上げたように、その気持ち良さとの兼ね合いだと思います。
雅万様:
これは清副社長が云うてはったんですけど、伝統技術を継承する学校がほしいと常々思っていたら、熊本県知事をされていた細川護煕さんが球磨工業高校に伝統建築コースを作ってくれはった。そこの卒業生が2人ぐらい、この家建てるとき来てはりました。こういう学校教育からの取り組みも安井杢さんならではでしょうね。 ところで、うちの家を建ててくれはった勝部棟梁の息子さんも御社にいてはったでしょ?
当社スタッフ:
はい。今は棟梁として仕事をしております。
雅万様:
親子で安井杢さんの大工さんやとか、あそこの現場もどこそこのお寺も同じ左官屋さん、この家の時も息子のとこも(同じ職人さんが)来てくれてはるなんて、普通の建築屋さんではないと思います。
だから安井杢さんとこにはずっとこれまでと同じように続けていってほしいですね。
当社スタッフ:
本日は貴重なお話をお聞かせいただきまして、どうもありがとうございました。この内容は社内で共有させて頂き、今北様のご期待に応えられるように頑張ってまいります。
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